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2024年問題で輸送、物流はどうなる?国際モータージャーナリストと語る!!

 

4月の事ですが、たまたま全日本ラリーでご一緒させていただいている国際モータージャーナリストでありレーサーでもありラリーストでもある清水和夫さんと対談させていただきました。

中小運送事業者である私の目線とメディアの偏った報道、国際モータージャーナリストであり自動運転レベル4の推進委員である清水和夫さんの考えと自動車の未来について、ざっくばらんに対談させていただきました。

清水和夫 Motor Journalist

神奈川工科大学 特別客員教授 自動車工学担当

■専門領域 自動車の運動性能・安全技術、自動運転・環境技術、ソフトウェア コネクト、欧米自動車の技術史

■ご経歴
1977年武蔵工業大学電子通信工学卒
1981年からプロのレースドライバーに転向
1988年本格的なジャーナリスト活動開始
日本自動車ジャーナリスト協会会員(AJAJ)
日本科学技術ジャーナリスト会議 会員(JASTJ)
NHK出版「クルマ安全学」「水素燃料電池とはなにか」
「ITSの思想」「ディーゼルは地球を救う」など
SIP自動走行 2013〜2021 構成委員終了
国土交通省車両安全対策委員・継続中
国土交通省ASV普及検討委員・継続中
国土交通省自動走行 公道走行WG ・継続中
国土交通省自動走行補助事業 推進委員・継続中
経済産業省 RoadToL4 自動走行推進委員・継続中
NEXCO東道路懇談委員・継続中

2024年5月になり、まもなく6月になろうとしています。4月から俗にいう物流の2024年問題が施行となりましたが、皆さんの身近なところで何か変わった事はありましたでしょうか?

今更ですが、2024年問題の概要を簡単にお伝えすると、この前までは医師・建設関連・運送業は年間の残業時間の規制が緩かった訳です。とは言いつつも、青天井に認められていた訳ではありませんが、「仕方ないよね」と目を瞑っていただいていた訳です。

例えば
・医師→そもそもの数が狭き難関な上に、流行病などが蔓延するとそもそも1人の医師の診察時間が増える、これ当たり前です。
・建設関連→工期が決まっているので、人手不足で工期を考えると1人当たりで夜遅くまで作業せねばならない。
・運送業→積込終わるのが夕方くらいで、そこから何百キロ離れた遠い所に翌朝に届けるとなると、夜通し走り続けなければならない。
上記はほんの一例ですが、ようはこのような状況もあるが、2024年4月以降は医師・建設・運輸も残業時間の総量規制をキチンと守りなさいね、という事です。

※本来は2019年から施行されていましたが、上記三業種は5年の猶予がありました。

当社は運送事業者なので、物流についての影響をお伝えします。

画像参照元:全日本トラック協会資料より(https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000306033.pdf

2024年4月以降、年間の総残業時間が960時間に規制され(月間80時間)それを超えると罰則規定となったのですが、全体的にどのような影響があるのでしょうか?

以前の記事で国内輸送量の内の宅配の占める割合はごくごく僅かとお伝えしたので、大多数を占める企業間輸送(BtoB輸送)を見ていきます。今まで、例えば専属便で一日13時間拘束で22日稼働とすると月間286時間となり(新改善基準告示では284時間となりNG)、このような便はそこら中にあるわけで、ひょっとしたら26日拘束だったり(月間338時間で以前の改善基準告示もオーバー)、365日稼働や市場カレンダーにトヨタカレンダーの通りの輸送というのも世の中には存在しています。

「1人で運転をするからじゃない?シフトしたらいいんじゃない?」という声ももちろんあるわけですが、人手不足が顕著に表れている運送業界は、なかなか簡単ではありません。

月ぎめの契約も日ごとの運賃×稼働した日数もあれば、月の稼働日数に関わらず「月に〇〇円」の取り決めもあります。これには個々の会社の考えがあると思います。

また別で完全フリーの便もあるわけです。ようは「俺の行き先は荷札が決めるゼ」みたいな運行ですね。この場合、配車マンの采配で組み込む訳ですが、もちろん事業として売り上げに利益を追及していかねばなりません。となると、どんどん組み込むパターンもあるわけです。ドライバーの労働時間など完全に無視してですね。ドライバーもそうですが、歩合でやっている配車マンも多くいます。となると、トラックを動かせば動かすほど自分の給与は上がるので、それを求める人は当然そうするでしょう。

が、しかし、ここにストップがかかった訳です。

決められた労働時間の内で運行しなさいよ、これからはそれを破ると罰則ありますよ、こういう事ですね。しかしながら今までの運行計画があるので、急に関西↔関東の運行などを10回から8回に減らしては、当然ながら売り上げは減る訳です。減った売り上げで同じ人件費や修繕費・固定費などを払うとどうなります?当然として会社は収支が合わなくなり赤字になります。これは誰でも計算できます。だからどうするかと言えば、「完全に無視する」「一便辺りの運賃を交渉して上げてもらう」となり、前者は論外として国は後者の運賃交渉して上げてもらいなさい、という事を言っているのです。机上の理論として、一便辺りの運賃が上がれば回数が減っても同じ売り上げじゃないかという訳です。

全体の概要はこういう事なのですが、これって実際に上手くいくのでしょうか??

もちろん上手くいく訳ありません。完全に消費されるモノが100tあったとして、もちろん消費期限があるとすると、その期日までにその商品は運びきらないとなりません。それをトラック一台当たりの運行回数減らすとなると、一台に多く積むとか、トラックの台数を増やさねばなりません。完全に消費されるモノであれば、本当にトラックのトレーラー化などが有効ですが、そういう簡単な事が出来るのは全体の何%くらいでしょうか?日々の配車情報を聞いているだけでも、そんな事はほとんどありません。もちろんトラックの長大化でクリア出来る事は必要ですし、それで国内輸送の内のいくつかは改善されるでしょう。その先の10〜20年後にはレベル4もしくはレベル5の自動運転が走り回ってると予測されるので、それはそれで便利な世の中になっていると思います。しかしながら、問題の本質はそこではないのです。ようは国内輸送、あえて物流全体と言うくくりで見ると、無駄な輸送がめちゃくちゃ多い訳です。

問題の本質である、無駄な輸送とは何か??

よく言われているのは「積載効率が悪い」や「空車回送時間の比率が高い」ですが、それってなぜ起こるのでしょうか?500kmくらいまでの距離の輸送の場合、よく地元で朝から自社の仕事があるから空車で帰らせる「空車バック」というのはよく聞きます。

実際のところこれも何とか車のやりくりすれば解決できる場合も多いですが、その「やりくり」を面倒くさがる配車マンも多いのが実際のところです。それはさておき、無駄な輸送が起こる根本的な原因は「個々が商品をバラバラの納期で欲しがる」ことだと思います。

全く関係ない企業間では当たり前の事ですが、同じサプライチェーン内でこれが起こるから無駄な輸送が多く発生する訳です。例えば部署間の連携が全く取れていないとか、仲が悪いとかを理由に、実は同じ方面に同じ時間帯の納品や引き取りが積載効率50%くらいでそれぞれ行われていたとか、これは一番典型的な例となります。時間ズラせば一台で運行可能なのに、企業の管理も甘々でそこまで見れていない、運賃支払いはザルである、つまるところ無駄に倍の運送コストをかけているという事になるわけです。

それでも運送コストを下げる為に、値下げの要求とか安かろう悪かろうの運んでくれる所を探す訳です。我々運送事業者としては「いやいやちょっと待って下さい、他に改善するとこ沢山あるでしょ?」というのが本音であり、逆に言えば運送事業者がそこまでお客様の所の物流全体を管理すべきなのです。もちろんそういう提案をするには経営者をはじめとする幹部は、ロジスティクスを真剣に学ばねばなりませんし、常に最新の情報を仕入れてお客様に提案せねばなりません。

そうする事により無駄な輸送は減るのか??

完璧にDX化されて見える化されており、無駄な輸送なんてこれっぽっちもない、このような所ってどれくらいあるのでしょうか?あくまでも肌感覚ですが、そこまで出来ている所って国内ではほとんどないんじゃないでしょうか。完全ルート配送や定期便、定型物の大量輸送などは現在ではAI配車を使っておられるところもあります。最近では、タクシーの配車も季節変動の需要予測をAIが行い配車に取り入れている所もあります。が、しかし、完全フリーのトラック輸送は、やはりまだ人の勘と経験でないと難しい部分が多くあり進まない原因となっています。
製造業のラインや生産管理はかなりDX化が進んでおり、発注から製造工程、仕上がりまで管理されている訳ですが、その先の物流の部分がDXとは言われているものの、まだまだといったところです。高価なシステムを導入してもそれを使うのは人であり、その部分のしがらみなどを改革していく方がよほど安上がりのはずです。

2030年頃には、現状の輸送能力の30%減くらいに輸送能力が低下すると言われています。だから輸送効率の向上や生産性UPが散々と言われているのですが、私どもの考えとしては「無駄な輸送やめませんか?」これに尽きると思っております。

現状より20%でもいいので無駄な輸送を省けば、後は先ほどのフルトレーラー化するなどすれば、随分と時間稼ぎは出来ると思います。そこから先は、夢の自動運転をどう活用していくかだと思いますし、そこに夢と希望はあると思います。でも、その前にやる事は本当に沢山あります。無駄に多くのトラックを動かし(積載率低めで)、「あぁ、今回も沢山輸送依頼いただいてよく売り上げあがった〜」ではなく、現状からいかに少ない台数で運ぶのか?これが肝心です。
単に下を潜る運賃提示ではなく、一台辺りの付加価値を上げて今より多くの運賃をいただき、全体数を減らしてトータルコストを下げる。私たちはこういう提案をお客様にどんどんしていき、共に日本の物流問題を改善していければと思っております。

こういうアイデアって、ほんの立ち話からも生まれて来ますので、このブログを読んで少しでも興味が湧かれたら、お気軽にお問い合わせください。一緒に改善をおこないましょう!